2026.02.04
この世界線の日本では、SNSは発展するのか
──「書けない社会」における発信と接続のかたち
はじめに
前章までで、本シリーズは
記述能力が専門技能化した言語社会において、
- 誰が書けるのか
- 書くことがどのような権限を持つのか
を考察してきた。
では、そのような社会において、
SNSのような即時的・大衆的な発信メディアは発展するのか。
本章では、
この世界線の日本におけるSNSの成立条件と、
現代とは異なる発展のかたちを検討する。
1. 結論:SNSは「発展するが、形は大きく異なる」
結論から述べると、
この社会においてもSNSは発展する。
ただしそれは、
- 誰もが自由に書き散らす場
ではなく - 読むことを中心に設計された空間
としてである。
つまり、
発信の民主化ではなく、
反応と読解の民主化
が起きる。
2. 「書く」ことの重さがSNSの性格を変える
この社会では、
「書く」という行為自体が重い。
- レイヤー選択が必要
- 表記誤用が即、設計ミスになる
- 公的空間では責任が発生する
そのため、
短文であっても、
書くことには専門性が伴う
結果として、
現代SNSのような
- 思いつきの投稿
- 感情の即時発信
は抑制されやすい。
3. 発展するのは「読むSNS」
この社会で発展するのは、
- 投稿するSNS
ではなく - 読むこと・反応することが主のSNS
である。
具体的には、
- 専門書き手の投稿を
大多数が読む - 反応は
- 既定の評価
- レイヤー別リアクション
として行われる。
SNSは、
言語設計の展示場
に近い空間になる。
4. 「いいね」は意味を持つ
この世界のSNSにおける反応は、
単なる感情表明ではない。
- このレイヤーは適切だった
- この表記は理解しやすかった
- この抽象度は妥当だった
といった、
読解結果の共有
として機能する。
つまりSNSは、
- 書き手の承認装置
であると同時に - 読解力の訓練装置
にもなる。
5. 書けない人は沈黙するのか?
答えはNOである。
この社会では、
- 書けない
= - 発言できない
ではない。
代わりに、
- 読む
- 評価する
- レイヤーを見抜く
という形で、
間接的に言論に参加する。
これは、
発信よりも解釈が重視される公共圏
を生む。
6. 炎上は減るが、消えない
この社会でも炎上は起きる。
ただし原因は、
- 感情の暴走
ではなく - レイヤー設計の破綻
である。
SNS上の炎上は、
書き手が
読み手の立つレイヤーを
誤認したとき
に発生する。
そのため炎上は、
- 感情的
ではなく - 技術的・構造的
な議論になりやすい。
7. 匿名性はどうなるか
匿名性は残る。
しかしそれは、
- 無責任さのため
ではなく - レイヤー実験のため
に用いられる。
匿名アカウントは、
- 新しい表記
- 新しい構造
を試すための
言語的サンドボックスとして機能する。
8. 現代SNSとの最大の違い
現代SNSは、
- 発信者中心
- 即時性中心
である。
一方この社会のSNSは、
読者中心・設計中心
である。
価値が置かれるのは、
- 何を言ったか
ではなく - どう設計したか
である。
結論
この世界線の日本でも、
SNSは確実に発展する。
ただしそれは、
- 叫ぶ場所
ではなく - 読むことと設計を共有する場所
としてである。
SNSは言論の民主化装置ではなく、
読解の公共空間になる。

コメント